倉谷 泰弘, 林田 亘平, 中山 雅人, 森勢 将雅, 西浦 敬信, 山下 洋一
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 112(47) 185-190 2012年5月17日
マルチチャネル2D-CSP法などの従来のマイクロホンアレーを用いた音源位置推定法は,マイクロホン間に生じる音波の到来時間差が,音源の位置に依存して変化することを利用して音源の位置を推定する.しかしながら,室内などの実環境では天井や壁により反射や残響が生じ,その影響で音源位置推定精度が低下するという問題がある.受音信号内で反射音を分離して除外することができれば,残響の影響を低減し,直接音同士の到来時間差のみで高精度な音源位置推定を実現できると期待できる.直接音と反射音を分離するためには,音源からマイクロホンアレーまでのインパルス応答を推定する必要がある.インパルス応答内で直接音は支配的なパワーを持つため,容易に反射音を分離し,除外することで残響の影響を低減することができる.そこで本稿では,ブラインドインパルス応答推定を用いた残響下音源位置推定法を提案する.提案法では受音信号のみを基に,ブラインドインパルス応答推定の一つであるVSS-UMCLMS法でインパルス応答を推定し,その中で反射音を分離して残響を低減した信号を用いて,音源の位置を推定する.提案法の有効性を確認するために実施した評価実験の結果より,提案法において従来法よりも音源位置推定精度が向上したことを確認した.