菅原 正孝, 藤川 陽子, 濱崎 竜英, 新井 剛典
大阪産業大学人間環境論集 9 243-260 2010年3月
古くて新しい土壌浸透法は,自然の浄化能力を利用した水処理技術の一つであり,汚水が土壌中に浸透し流下する過程で,汚水中の汚濁物質が土壌を構成する土粒子などの物理的なろ過,化学的な吸着及び生物化学的な分解という分離・分解機能によって除去されるというものである。浄化が可能な汚濁物質は,浮遊物質,有機物,リンなどが挙げられるが,土壌内において無機性の浮遊物質などによる目詰まりが起こりやすく,また処理速度が遅く,所要面積が大きいなど,難点があり,適用されるケースも限られている。土壌浸透法で対象とする汚水は広範にわたり,生活雑排水,し尿や畜産排水の処理水,河川や湖沼の環境水,雨水などがあげられる。本稿では,こうした土壌浸透法の従来のシステムを概観し,あわせて筆者らがこの10年ほど携わってきた研究調査及び事例について取りまとめた。自然土壌のみでは浄化能力は,多くは期待できない。よって,浄化機能の改善には混合土壌方式が有望である。具体的には,マサ土,黒ボク土,赤玉土などを浄化材料として利用し,活性炭,木炭,凝集剤を添加して,有機物やリンなどの栄養塩類の分離除去能を大きくする。ろ過速度を上げるためには,多段層方式や造粒方式が必須であり,そのための様々な技術開発を行ってきた。さらには,廃棄物の有効活用の視点から,充填材の開発もあわせて行ってきた。それらの成果や実施例を概観するとともに将来に向けての適用可能性について言及した。