研究者業績

田口 まゆみ

タグチ マユミ  (Mayumi Taguchi)

基本情報

所属
大阪産業大学 国際学部国際学科 教授
学位
PhD(Keio University)
博士(文学)(慶應義塾大学)
Master of Arts(Osaka University)
文学修士(大阪大学)

研究者番号
30216832
J-GLOBAL ID
200901059908716240
researchmap会員ID
1000107804

経歴

 3

論文

 11
  • 田口まゆみ
    Notes & Queries 62(3) 364-372 2015年9月  査読有り
    ケンブリッジ大学、モードリン・コレッジ、サミュエル・ピープス図書館所蔵、写本2125およびケンブリッジ大学図書館、写本 Ff.vi.33 に収録されているイエスと聖母の短い会話は、最後の晩餐の前日、聖母から死を目前にしたイエスへの4つの嘆願を扱っている。本稿は、その原典についての情報が誤りであり、偽ボナヴェンチュラ作『キリストの生涯の黙想』に影響を受けた仏語贋作『イザベル王妃のために書かれた受難物語』(通称)のうち「聖母の4つの願い」と呼ばれる部分の訳であることを明らかにした上で、仏語原典とラテン語原材、また英訳との差異について文献学的に解説し、さらに本作品に表れているマリア信仰の特徴を分析した。
  • Postmedieval: a journal of medieval cultural studies, 3.3, “Cognitive Alterities/ Neuromedievalism” 3(3) 315-327 2012年9月  査読有り招待有り
    中世後期ヨーロッパでは、特にキリストの生涯について、言わば映像化するように現実的な想像をし、その想像世界に自分自身も置いてキリストと聖母と場面を共有し、共感するという「参加型情動的黙想 (participatory affective meditation)」が神秘主義者の間で過激化したのみならず、一般信徒にも広く流行した。この方法は一般信徒が私的な空間で実行することができたので、信仰、そして精神の自立につながり、近代における自我の形成に役立ったと言われている。本稿は「キリストを真似る」というトポスに代表されるこの自己完成型の内省的な信仰形式が流行した理由を、近年の脳神経科学理論(特にアントニオ・ダマシオの心身の連携的相互作用理論、リチャード・ド―キンスのミーム理論、ミラー・ニューロン理論)を援用して説明しようと試みたものである。
  • Mediaeval Studies 67 157-217 2005年  査読有り
    ケンブリッジ大学、モードリン・コレッジ、サミュエル・ピープス図書館蔵写本2125に収録されている宗教文献の学術的校訂版である。写本の説明・分析、作品のスタイル、典拠、作者・読者等についてのイントロダクションと注釈・語注を付した。 掲載誌Mediaeval StudiesはToronto大学Pontifical Instituteの出す学術雑誌であるが、学術校訂論文はラテン語文献に限られていた。本稿は初めてMedieaeval Studiesが掲載した英語文献の本文校訂論文である。 本テキストを収めたCambridge大学、Magdalene College、ピープス図書館写本2125は50編以上の宗教文献で構成されているが、14世紀末から1世紀以上を掛けて完成した。他の写本で発見されていないテキストや特殊なヴァージョンが多く、本作品も他写本に見つかっていない。
  • 田口 まゆみ
    大阪産業大学論集 人文科学編 98(98) 27-46 1999年  
    現在に伝わっている中世古写本の性質、内容について紹介し、その上で未だに一般研究者にはアクセスの乏しい状況で残っているマイナーな文献に関し、特に宗教文献が当時の民衆の精神史を反映していること、あるいは大衆の精神文化を作り上げていたことを示しているということを論じた。キリスト教に色濃く染まっていた中世についてのいかなる研究も、こうした民衆レベルの教化運動を伝えるマイナーな宗教文献を軽視してはならないと言える。
  • Reading Medieval Studies 24 95-112 1998年  査読有り
    1215年のラテラノ公会議で万人に年1回の告解が義務づけられたのをきっかけに、全ヨーロッパ的に民衆とその教化にあたるべき教会関係者の大々的な教育が行われ、多くの宗教文献が書かれた。本稿では、文学作品との比較により、これに固有と思われてきた複数のモチーフや比喩が実は一般信徒を対照として書かれた宗教文献に見出されることを指摘し、文学研究においてもその土壌となった文化的背景を正しく知ることが重要であることを述べた。

MISC

 22

主要な書籍等出版物

 18
  • Mayumi Taguchi, John Scahill, Satoko Tokunaga (担当:共著, 範囲:全体)
    Oxford University Press 2021年7月22日 (ISBN: 9780192847676)
    This is volume II of the first scholarly edition of the Golden Legend, the largest and most elaborate production of the first printer in English, William Caxton. This second volume contains Caxton's most notable addition: a series of Old Testament legends, from Adam to Judith; it contains its own explanatory notes, glossary, and Index of Proper Names. It reproduces Caxton's original text with modern punctuation and capitalization, notes on content, syntax and lexis, a detailed glossary and an index of proper names. The notes provide detailed support for the view that Caxton's text is largely based on the work of an earlier unknown writer in English. They also demonstrate that writer's strikingly independent handling of a variety of sources, including the Latin Vulgate Bible, the Historia scholastica, the French Bible historiale, and the English Cursor mundi and the Wycliffite translation of the Bible.
  • ジェフリー・チョーサー, 監訳, 池上忠弘 (担当:共訳, 範囲:律修参事会員の召使いの話)
    悠書館 2021年7月15日
    英詩の父と称されるジェフリー・チョーサーの韻文物語集『カンタベリ物語』は中世英文学を代表する一大傑作である。日本語でもこれまで十指に余る翻訳が出版されてきた。本新訳は、原作の構成に似せて、さながら巡礼一行のごとく総勢二四名の日本中世英文学の学徒がこの計画に参加し、訳業を完成させた。
  • Mayumi Taguchi, John Scahill, Satoko Tokunaga (担当:共著, 範囲:全体)
    Oxford University Press 2020年7月30日 (ISBN: 9780198867968)
    This is volume I of the first scholarly edition of the Golden Legend, the largest and most elaborate production of the first printer in English, William Caxton. It is an English translation of Jacobus de Voragine's Legenda aurea (ca. 1267), a collection of legends for the feasts of saints (the Sanctorale) and other major days of the liturgical year (the Temporale). The Legenda aurea was one of the most popular and influential books in the later medieval Western world; it circulated widely, and was repeatedly translated into many vernacular languages. This volume reproduces Caxton's original text of the Temporale with modern punctuation and capitalization, notes on content, syntax and lexis, a detailed glossary, and an index of proper names.
  • 田口まゆみ, 家入葉子 (担当:共著, 範囲:言語的解説を除く全体)
    Heidelberg: Universitaetsverlag Winter 2019年5月
    This Middle English prose survives uniquely in Cambridge, Magdalene College, MS Pepys 2125 and has not been previously published. It is one of several Middle English translations of the Passion sequence of the pseudo-Bonaventura Latin _Meditationes vitae Christi_. The Introduction includes an extensive description of the manuscript which is a late medieval devotional miscellany, and a detailed account of the language of the text. It also addresses the textual tradition. The edited text is followed by a commentary, glossary and bibliography.
  • 田口まゆみ (担当:分担執筆, 範囲:“The Use of Sources in The Historye of the Patriarks and Caxton’s Golden Legend”)
    Turnhout: Brepols 2018年2月 (ISBN: 9782503568478)
    中世末期の英文学作品はその多くがラテン語、フランス語の作品の翻訳・翻案である。さらに、中世の作家たちは、複数の作品の訳を統合して一つの作品に作り上げたし、一つの原典作品に対しても複数の言語によるヴァージョンを比較しつつ翻訳を行った。よく認知されていないこの事実を、聖書物語を扱った二つの作品について詳細に解説・証明し、さらに俗語聖書が禁じられていた15世紀イギリスの文化的背景に照らし合わせて論じた
  • Stephen Kelly (Queen's, Univ Belfast, Ryan Perry, Ke, Denise Despres, Univ of Puget Sound, Maureen Boulton, niv of, Notre Dame, Mary Dzon, iv, of, T, Knoxville, dlsns Villalobos Hennessy (City, Univ of New York, Rachel Canty, David Griffith, iv of Bi, m, Sheila Sweetinburgh, Univ of Huddersfield, Sarah Macmillan, niv of Birmingham, Daniel McCann, iv of Oxford, Elizabeth Scarborough, Queen's Univ Belfast, Eleanor McCullough, Univ of, York, He
    Turnhout: Brepols 2014年7月
    ケンブリッジ大学、モードリン・コレッジ、サミュエル・ピープス図書館蔵の写本2125に収録されている「キリストの受難の黙想」は偽ボナヴェンチュラ作『キリストの生涯の黙』の受難部分の中英語訳である。本論は、このテキストの校訂版準備の一環として(上記5と同じくMiddle English Texts シリーズとして刊行されることが決まっている)、テキストの特徴を他の翻訳とも比較しながら検証した。特に、翻訳に使われたラテン語テキストについての調査において、A. C. Peltierが校訂した『キリストの生涯の黙想』(1868)が本文系譜的に近いことを証明した。この見解は、従来、同種の英語訳は、『キリストの受難の黙想』と呼ばれる『キリストの生涯の黙想』の抜粋版をもとに作られたとする解釈を覆し、さらにこのラテン語抜粋版『キリストの受難の黙想』が単一の系譜を持つものではなく、別々に同じ衝動のもとに発生したものであることを示唆する見解として評価された。
  • Simon Horobin, Oxford Univ, Linne R. Mooney, Timothy Graham, niv, of, New Mexico, Richard Firth Green, Ohio State, Uni, Carrie Griffin, iv of, B, Gareth Griffith, iv, of, Phillipa Hardman, Univ of Reading, John C. Hirsh, Georgetown Univ, Terry Jones, independent scholar, Takako Kato, M, Mary Morse (Rider Univ, James J. Murphy, Univ of California, Davis, Natalia I Petrovskaia, niv, of, Cam, Susan Powell, Salford University, Ad Putter
    York: York Medieval Press 2014年7月
    ケンブリッジ大学、モードリン・コレッジ、サミュエル・ピープス図書館蔵、写本2125は、14世紀末から15世紀末までの100年間に再製本や文献の追加・削除が行われ現在の形になった。宗教的文献のコンピレーション写本であり、収録されている文献の数は、図書館カタログによれば52である。恐らく初め個人に所有されていたことが原因であると考えられるが、後継の写本が残っておらず(つまりこの写本からコピーされた文献が知られていない)、従ってこの写本にのみ現存するヴァージョンや文献がほとんどである。筆者は写本の形状的特徴(materiality)を初め、収録された文献の特殊性を精査し、この写本が形成されていった過程とその文化的背景について詳細な分析を行った。
  • Richar Dance, Cambridge University, Laura Wright, Cambridge University, Javier Calle Martin, iversity of Malaga, Spain, David Moreno Olalla, iversity of Malaga, Julia Fernandez Cuesta, Luisa Garcia Garcia, J. Gabriel, A. Carredano, Seville University, Gabriella Mazzon, rsity of Cagliari, Hanz-Jurgen Diller (Ruhr, University, Bochum, Cynthia Allen (Australian National University, Ewa Ciszek, Adam Mckiewicz, University, Poland, Maria Jose Carrillo-Linares, E. Carrido-Anes (担当:分担執筆, 範囲:"Devotional Terms and the Use of the Bible in Nicholas Love's Mirror of the Blessed Life of Jesus Christ”)
    Frankfurt am Main: Peter Lang 2012年 (ISBN: 3631628757)
    ニコラス・ラヴによる『イエスキリストの尊い生涯の鏡』は偽ボナヴェンチュラ作『キリストの生涯の黙想』の英語訳で、15世紀初頭、禁止されていた英語訳聖書の代わりの書物として教会から認可を受けたため、多くの写本が作成され、今も残っている。この書は、リアリスティックに想像したキリストの生涯の世界に自己投入することにより宗教心を駆り立てる「黙想」という方法をさらに広めた。この類のテキストに特徴的に用いられる、想像力を駆り立てるための用語について、特にstir, reason, open, edify, profit, fruitful, exampleといった用語のラヴの本作品中での頻度・分布を詳細に調べた。またラヴの聖書引用の特徴についても精査し、ラヴの意図は信徒の教育であり、言わば言葉によって教育的な絵を描こうとしたと言えるのではないかと結論した。
  • 田口まゆみ
    Heidelberg: Universitätsverlag, Winter 2010年 (ISBN: 9783825357504)
    『創世記物語』は、中世ヨーロッパ全域で神学の教科書として使われた上、広く引用され、翻訳されたペトルス・コメストル作『スコラ神学の歴史』(Historia Scholastica, c. 1170)の創世記部分を翻訳し、さらにその仏語訳『聖書物語』(Bible Historiale, c. 1295)およびウルガタ聖書の翻訳と組み合わせ、同時代のその他の聖書物語からも影響を受けつつ独自の作品となっている。本校訂版では『創世記物語』と上記のラテン語・仏語テキストを並列して4点を比較できるように配慮し、『創世記物語』と作品の材源テキストに対する2種類の後注で解説している。 序論では上記原典の解説に加え、写本についての文献学的記述、『創世記物語』の言語的特徴、読者層などについて述べている。特に、仏語訳『聖書物語』からの翻訳であるという従来の説とは異なり、複数の材源を同時に参照しながら新しい版を作成していったことを明らかにすることができた。また聖書翻訳が禁じられていた15
  • 高宮利行, 松田隆美編 (担当:分担執筆)
    雄松堂 2008年12月
    Gawain詩人の項目を担当。ただし、近年の研究動向については松田隆美氏が執筆。 本書は中世文学の原典を読み、調査するために必要な基本情報を網羅して若い研究者の育成に寄与することを目的としたガイドブックである。中世イギリス文学の作品を主要作家やジャンルごとに解説して、主要なテクストの校訂版と研究書、さらに最近の研究動向も紹介している。英語以外の中世ヨーロッパ文学、宗教史、美術史、書物史などの関連分野論文、近代以降のイギリス中世文学受容の歴史も収録し、文学作品と歴史的事件を対比させた分かりやすい年表も付している。

講演・口頭発表等

 31

その他

 1

研究テーマ

 7
  • 研究テーマ
    14・15世紀の宗教文学と一般信徒の信仰:写本文献の伝播と変容に基づく研究
    キーワード
    西欧中世、宗教文献、敬虔主義、写本研究、初期印刷本
    概要
    主に15世紀の写本文献を中心に、同じ写本に収録された文献の種類と配列順序なども合わせて考察することにより、当該の文献や写本の受容者像を考察する。ヨーロッパ全域の文化的背景も考慮する。
    研究期間(開始)
    2012/04/01
    研究期間(終了)
    2015/03/31
  • 研究テーマ
    ウィリアム・キャクストン訳『黄金伝説』に挿入された聖書訳
    キーワード
    15世紀、英国、聖書、黄金伝説、キャクストン、初期刊行本
    概要
    ウィリアム・キャクストン訳『黄金伝説』に挿入された聖書訳の典拠研究。また、15世紀後半の英訳聖書の受容について考察する。校訂本を計画中。
    研究期間(開始)
    2013/03/01
  • 研究テーマ
    ピープス図書館写本2125番に関する研究
    キーワード
    写本、15世紀、校訂、宗教文献、コンピレーション
    概要
    後期中世の宗教文献コンピレーション写本の中でも特に特異なヴァージョンを多く収録するこの写本の内容と特徴を詳細に述べ、15世紀英国の宗教文化の特性について考察する。この写本中の未刊行の文献を校訂・出版する。
    研究期間(開始)
    1994/03/01
  • 研究テーマ
    後期中世英国における宗教文献の伝播について
    キーワード
    写本研究,宗教,中世イギリス
    概要
    後期中世英国、特に14-15世紀における宗教文献の伝播について、 写本研究を通して考察を加える。
    研究期間(開始)
    1995/04/01
  • 研究テーマ
    ニコラス・ラヴ『イエス・キリストの生涯の生涯の黙想』
    キーワード
    15世紀、聖書、黙想、キリストの生涯、ウィクリフ、ロラード
    概要
    聖書の英訳が禁止されていた15世紀英国における同書の目的、影響などを考察する。邦文訳も進行中である。
    研究期間(開始)
    2004/01/01
    研究期間(終了)
    2010/12/31
  • 研究テーマ
    Historye of the Patriarks (Cambridge, St. John's College, MS G.31): 中英語による『創世記』訳の校訂・刊行
    キーワード
    15世紀、聖書、中英語、創世記、聖書注釈、ペトルス・コメストル
    概要
    Historye of the Patriarksを典拠とパラレルに並べた校訂本を出版した。
    研究期間(開始)
    2003/10/01
    研究期間(終了)
    2009/11/30
  • 研究テーマ
    後期中世:個人主義の萌芽 ― 内省的信仰形態の発展に見る認知的特徴
    キーワード
    黙想、民間信仰、15世紀、ニコラス・ラヴ、キリストの生涯
    概要
    15世紀英国で一般的であった信仰形態を、その認知に関わる表現の特質を脳神経学的に分析し、どうして抑圧の世紀15世紀に、続く改革の時代の準備が整っていったかを考察した。
    研究期間(開始)
    2007/04/01
    研究期間(終了)
    2012/07/31