中村 徹
大阪産業大学経営論集 第9(第2) 1-18 2008年2月 査読有り
本研究では、欧州裁判所の裁判記録を手掛かりにして訴訟内容を掘り下げて考察し、今後の大西洋横断航空市場の形成の礎となる判決であることを明らかにした。従来の2国間航空協定に基づいて締結されたEU加盟国とアメリカとのオープンスカイ協定がEU条約あるいはEU法に反するものとして、EU委員会は各加盟国が個別にアメリカと締結したオープンスカイ協定の無効を主張し、欧州裁判所に告訴を行った。判決結果によれば、料金設定の問題及びCRSに関する2409号及び2299号規則について共同体の排他的権限が認められた。また、オープンスカイ協定に含まれる国籍条項がEU条約に反することが確認された。EUとの航空交渉において国籍条項に基づく差別が否定されたことにより、アメリカを含む第3国はEU加盟国に対して非差別的に市場アクセスを開放しなければならなくなった。