宮本忠吉, 藤本繁夫, 栗原直嗣, 金尾顕郎, 辻英次, 前田如矢
体力科学 43(2) 155-161 1994年4月 査読有り
1.本研究では, 健常者10名を対象として, 胸郭を水中から出した横隔膜および頸椎の水位で動的及び静的肺機能検査を実施し, 水位差の肺機能に及ぼす影響について検討した.<BR>2.横隔膜の水位では, 機能的残気量, 全肺気量, 肺活量の肺気量分画の軽度の減少と一秒量, V50及びV25の著明な低下が認められた.これは, 水圧による腹壁の圧迫に加え, 胸腔内への血液量の増加による気道狭窄の関与が示唆された.<BR>3.頸椎の水位では, 機能的残気量の著しい低下の出現に加え, 各肺気量分画の減少および一秒量の低下率がさらに増強した.この水位レベルでは, 前述のメカニズムの増強に加え, 水圧による胸壁の圧迫が加わったためと推測された.<BR>4.横隔膜水位から頸椎水位まで水浸レベルを増すと, FRC, VC, TLCの静肺気量位及びFVC, FEV1・0, V50, V25の低下率が有意に大きくなったが, PF, V75, 及びRVは水浸の程度には影響しなかった.