土山秀夫, 井上義彦, 平田俊博, 樽井正義, 小熊勢記, 塚崎智, 新田孝彦, 円谷裕二, 河村克俊, 蔵田伸雄 (Role: Contributor)
晃洋書房, Apr, 1996 (ISBN: 4771008337)
1994年11月26日に長崎大学で行われた日本カント協会の公開シンポジウム「カントと生命倫理」の内容を中心に、さらに数篇の論稿を加えて成立したのが本書である。 正面からカント倫理学と生命倫理との関係をテーマとした本は、おそらく世界でも最初であろう。 著者は、シンポジウムの際には司会を務め、本書の出版にあたっては第9章『カントと生命倫理教育』を執筆し、カントの教育理論が生命伶理教育において有意義を導きの糸たりうることを論じている。すなわち、現代の生命倫理で重視されている「自律」(autonomy)の概念の最大の源泉はカントである。そしてまた、『実践理性批判』や『人倫の形而上学』などで示されているカントの道徳教育方法論は、原則主義とケース・メソッドと徳倫理学とを統合的に組み合わせながら使用していく道を、現代の生命倫理にも指し示しているように思われるのである。