サプライチェーン管理の領域では,需要の不確実性が高い工業製品を対象とした研究が多い.本稿では逆に,供給の不確実性が高い非工業製品であり,農業製品のひとつである種子に焦点を当てる. 国内大手のタキイ種苗の事例研究にもとづいて,まず種子のサプライチェーンを概観する.続いて,よく知られているHau L. Lee の枠組みを使い,種子のサプライチェーン戦略をリスク管理重視に位置づけて,リスク管理の分析枠組みを設定する.その分析枠組みを使って,タキイ種苗によるリスク管理の取り組みについて議論し,同社の事例から有益な示唆を引き出す.