Akihiko Iwata

低いスイッチング周波数により優れた電圧波形が得られる段階制御電圧形インバータを用いた自励式無効 電力補償装置(STATCOM)について述べた。Vc,2Vc,および4Vcの3種類のそれぞれ異なる出力電圧のインバータを3台直列に接続して各相を構成することによって15レベルの多レベル電圧出力を実現する。出力電圧が2Vcおよび4Vcのインバータは低いスイッチング周波数で動作して無効電力補償を担当し,出力電圧がVcのインバータはPWM制御で運転して電流波形の成形を担当する。この手法によって損失を極小化でき,高い効率が実現できる。階調制御電圧形インバータを用いた提案STATCOMの原理を紹介し,実験用小形STATCOMを用いた実験結果を報告した。

外部電源を必要としない低損失のＭＯＳＦＥＴ整流素子の開発に成功した。ＭＯＳＦＥＴを外部電源により同期整流すればダイオードよりも低損失になることはわかっているが、外部電源が大型化するという課題がある。本方式は、整流時に発生するＭＯＳＦＥＴ自身のオン電圧を昇圧して駆動用の電圧を作り、その電圧でＭＯＳＦＥＴを駆動する独自のものである。従来のダイオードに比べ47％の損失低減を実現した。

新しい回路法である自己ターンオン型電流バイパス回路を提案した。直列接続しているいくつかの電流駆動装置が破壊によって開になっていても,この回路では主回路電流は連続して流れることができる。提案回路の動作と設計法について詳細に述べた。また,ヒューズのシミュレーションモデルを構成する方法についても述べた。そのヒューズモデルを用いて提案回路をシミュレートした。MOSFETの損失を増加させることなく回路は動作した。ダイオードが開の時でも60Aの電流を連続して流すことができることを証明した。

3進数で段階的に制御される電圧形インバータを使った,効率のよいラックマウント型単相UPS(無停電電源)の開発について示した。入力電圧82.5〜117.5Vrms,出力電圧100rms,出力1kWの開発UPSによる実験を行い,性能を確認した。LC出力フィルタの小型化と電源装置の損失減少によって,高効率(最大97%),薄型サイズ(29mm/kVA)の1.5kVA UPSを実現した。市場用モデルとして4種類のラックマウント型UPS—1.5kVA(バックアップ時間5,10分),3.0kVA(バックアップ時間5,15分)を製作した。

大電力短パルス無声放電CO2レーザを駆動するための昇圧変圧器を使用しない高電圧インバータ装置を開発した。電力用MOSFETを6直列4並列に接続した単位スイッチ4組を組み合わせたフルブリッジインバータを用いて,±3kVの直流電源から直接2MHz,6kVを出力する。各MOSFETにはスナバ回路と動的クランプ回路を設けてFET間の同期ズレ(20ns以下)による過電圧を防止しており,直列MOSFET間の電圧不揃いを±3%以内としている。昇圧変圧器を使用せず漏れインダクタンスの影響を受けないため,従来方式に較べて遙かに大きな出力を取り出すことができる。昇圧変圧器省略の必要性および回路設計の詳細について述べ,試験結果を示した。従来方式の約7倍の20kWのレーザピーク出力を実現できた。