大森信, 日本, 竹村正明, 今井希, 滝本優枝, 宇田理, 日本 (担当:分担執筆, 範囲:第5章 プラクティス・ターンからの戦略転換についての理解:旭酒造「獺祭」の開発事例を通じて)
同文舘 2015年10月 (ISBN: 9784495386214)
近年経営戦略論の分野で注目さる実践としての戦略(Strategy as Practice)という視点は、既存の戦略論の議論に対して様々な批判を提供するものと考えられるが、問題点も多い。その中で本章では、SaPが戦略を「戦略に関わる人々が行う何か」として定義することに対する、「戦略」と「関わる人々」を前提としているという批判について検討する。戦略とそれを遂行する人々を前提とした途端に、SaPが目指した実践の理解は既存の理論的枠組みに回収されてしまうことになる。このSaPの抱える問題に対し、人々がいかにして戦略に関わる人々として捉えることが可能となるのかという問題を、本章では、実践論的転回の議論を参照しながら、戦略の主体化の問題として捉え直していく。この戦略の主体化を捉える分析の枠組みを構築するとともに、具体的な事例として、旭酒造の「獺祭」の開発プロセスにおける戦略の主体化と実践的活動の変化を考察していく。