木下和昭, 中川泰彰, 向井章悟, 伊藤盛春, 井上直人, 橋本雅至, 大槻伸吾
日本臨床スポーツ医学会誌 27(2) 273-278 2019年4月30日 査読有り
本研究は一年の間(2015年から2016年)に肩肘関節に新しく障害が発生した小学野球選手の肩関節可動域の特徴について検討した.対象は2015年と2016年の野球検診に参加した170名とした.測定項目は年齢,身長,体重,BMI,野球歴,ポジション,肩肘関節障害の有無,肩関節可動域測定(2nd外旋,2nd内旋,3rd内旋)とした.また2nd外旋と内旋の和を算出した.検討方法は2015年と2016年共に肩肘関節の障害を有さなかった選手(以下,健常群)と2015年には肩肘関節の障害を有さず,2016年に新たに肩肘関節の障害を有した選手(以下,障害群)に群分けし,両群の各測定項目を比較した.結果,2015年は両側の全ての項目において健常群と障害群との間には有意な差が認められなかった.一方で,障害群の投球側の2nd外旋は2015年と比較して2016年に有意な低下が認められた.以上より,肩肘に障害を有する小学野球選手は,一年前の肩関節可動域に特徴がなく,疼痛発生後は投球側の2nd外旋が低下することが明らかとなった.